映画館という場所

2024年3月17日(日) 春がきて、ことしもまた一年分、数字をならべる。おお、これは。わたし、このままで大丈夫かな。いや、大丈夫じゃない。なにか考えなあかんなあ。そう言うと、旦那さん。また、そんなことを言って。お菓子が…

夜の張り紙

2023年12月4日(月) ある朝、旦那さんが新聞の上に広告をのせて、机に置いた。一面が隠してある。ひどい写真が載っている、と言った。ケガをして泣いている小さな子どもが映る写真だった。数日後、いい写真やなあ、と言ったのは…

夏至

2023年7月1日(土) ことしも六月が過ぎた。待っていた夏至の日も。家の中に湿った風がながれて、六月の風がやっぱりいちばん好きだなと思った。 何年ぶりだろう、口紅を買った。落ちついたピンク色。マスクをとって生活するよう…

明るい未来

2022年11月21日(月) 『言葉をもみほぐす』そんなタイトルの本を読んだ。赤坂憲雄さん、藤原辰史さんの往復書簡。読みながら途中、なんども目につよい圧がかかるのを感じた。目というのは、ふだんは、見ようとせずとも視界に入…

明るい歌

2022年10月22日(土) あたらしい歌ができた。6月の庭に流れる、風のことをうたった歌。最初にメロディを口ずさんでいたのは、一昨年の6月だから、二年かけてゆっくりと形になった、静かな、線画のような歌。それは、バンドの…

2022年の春

2022年3月30日(水) 新しい年が始まったころ、店に来てくれた人が言った。「不穏な時代になりましたね」これ以上ない、ふさわしい言葉だと思った。少しずつ季節が移ろって、その言葉が前にも増して、ぴたりと当てはまるようにな…

書いてよし

6月19日(土) 少し前、ある展示会の寄稿文をお願いしてもらった。5名の方の絵や布の作品を見て、感想を書く。大学を出てから広告のコピーライターという仕事をしていた。今も時々、取材をして、文章をまとめる。お話を聞いた人やお…

聴きたかったことば

11月8日(日) あちこち掃除や片づけをする。こんがらがった頭の中を整えようと思って。 電話の向こう、何年ぶりだろう、とてもなつかしい声を聴いた。「友だちが送ってくれたのが、ゆりちゃんのおやつでさ、ものすごくびっくりした…

梅の実の魔法

2020年7月10日(金) 部屋に飾った、おさがりのひまわりは、よく日焼けした男の子の肌みたいな色をしている。 このあいだやってきた畳屋のお母さん、体調もわるいし、全然外も出たくないねん、とすっかり元気がなかった。花を買…

魂はどこへ

2020年6月10日(水) 雨がふって、やんで、またふって、涼しい風が部屋に流れこむ。梅雨入り。 一昨日、夜ごはんをつくっているとき、旦那さんが言った。ゆりちゃんは死んだあとについて、どう思われます? 魂はどうなると考え…