明るい未来

2022年11月21日(月)

『言葉をもみほぐす』そんなタイトルの本を読んだ。赤坂憲雄さん、藤原辰史さんの往復書簡。読みながら途中、なんども目につよい圧がかかるのを感じた。目というのは、ふだんは、見ようとせずとも視界に入ってくる景色が、何の気なしに映っている。本を読んでいるあいだは、時折、ぐいとその中に引き込まれ、目が、活字を全力で追いかけていた。映像でもないのに、食い入るように、その本の言葉を見ていた。

霧のようにうっすらとたちこめているもの。気にもとめず、少しずつ積み重なっていくようなもの。

店ではたいてい長谷健さんが歌っている。スピーカーから。「ここから先は明るい未来が待っている」これまでは聞き流していた歌詞がふと胸に引っかかる。本当にそうだろうか。未来は明るいのか。じぶんが、未来は明るいと思っていないことに、ふと気づく。

民俗学者、歴史学者であるふたりの手紙のやりとりには、ふるえるような怒りについても書かれていた。それに対し、じぶんの仕事を通して、抗う姿勢も。読みながら、ああ、わたしは怒りたかったのだ、と思った。ちくしょう、と叫びたい気持ちでもあったのだ。

じぶんはどう抗うのか。できることは、くさくさすることなく、世界のうつくしさをよろこぶこと。できるだけ口角をあげて。そうやって、じぶんなりに、静かに、抗いたいと思う。だれもが突きつけられているような、むなしさに。